人材紹介会社を増やしても採用できない理由
「人材紹介会社を何社も利用しているのに、なかなか採用できない」
最初は1社、2社だった人材紹介会社との取引が、採用活動の長期化とともに増えていく。紹介される候補者が少なければ、別の紹介会社に声をかける。期待する人材が見つからなければ、さらに取引先を増やす。
その判断自体が間違っているわけではありません。人材紹介会社によって、得意とする業界、職種、年齢層、役職など異なります。取引先を増やすことで、これまで接点のなかった人材と出会える可能性もあります。
しかし、ここで考えていただきたいことがあります。人材紹介会社を増やすことと、採用成功できることは、必ずしも同じではありません。
紹介会社が増えても、紹介される人材が変わらない。候補者が紹介されても、面接に進まない。面接をしても採用に至らない。こうした状況が続いているのであれば、紹介会社が問題であるケースは少ないです。
今回は、人材紹介会社を増やしても採用できない企業が、改めて確認したい5つの視点について考えます。
1. そもそも、なぜ人材紹介会社を増やそうとしているのか
採用がうまく進まないとき、企業は何らかの対策を講じようとします。求人広告を変更する。採用条件を見直す。採用担当者を増やす。そして、人材紹介会社との取引を増やす。いずれも採用活動における選択肢です。
ただし、対策を決める前に確認したいのは、現在の採用活動のどこに問題があるのかということです。
例えば、人材紹介会社から候補者がほとんど紹介されないのであれば、候補者との接点を増やす取り組みが必要になります。一方、候補者は紹介されているのに書類選考で不合格が続いているのであれば、採用要件の設定や紹介会社との認識の違いを確認する必要があります。面接まで進んでいるのに辞退されるのであれば、選考方法や候補者との接点内容に問題がある可能性があります。
これらは、すべて「採用できない」という同じ結果につながりますが、原因は異なります。
採用できないという事象に対して、紹介会社を増やすという対策を直接結びつけていないでしょうか。
まずは、紹介数、書類選考の通過率、面接通過率、内定承諾率などを確認し、採用活動のどのフェーズに改善の余地があるのかを整理することが重要です。
2. 求める人材の条件が、採用市場と合っているか
人材紹介会社を増やしても採用できない理由の一つとして考えられるのが、採用要件と市場の実態とのズレです。例えば、企業が次のような人材を求めているとします。
- ✓ 同業界で十分な経験がある
- ✓ 同じ職種で高い実績を残している
- ✓ マネジメント経験がある
- ✓ 入社後すぐに成果を出せる
- ✓ できるだけ若い人材が望ましい
企業側から見れば、どれも理由のある希望かもしれません。しかし、すべての条件を満たす人材が、採用市場にどれほど存在するのでしょうか。さらに、その人材が転職を希望しているとは限りません。転職を検討していたとしても、他社から魅力的な条件を提示されている可能性があります。
人材紹介会社は、企業が希望する人材を無制限に生み出せるわけではありません。採用市場に存在する候補者と企業を結びつける役割を担っています。そのため、採用要件が市場の実態と大きくずれている場合、紹介会社を増やしても十分な候補者が集まらないことがあります。
ここで必要なのは、単純に採用基準を下げることではありません。本当に必要な条件と、できれば満たしてほしい条件を分けることです。
業界経験は必須なのか。それとも、近い業務の経験があれば活躍できるのか。管理職経験は入社時点で必要なのか。将来の管理職候補として育成する選択肢はないのか。
こうした検討は、採用したい人物像を曖昧にするためではありません。事業や組織にとって、本当に必要な人材を明確にするためのものです。
3. 人材紹介会社に、求人票以上の情報を伝えているか
人材紹介会社との取引を開始するとき、多くの企業は求人票を共有します。仕事内容、応募資格、給与、勤務地、勤務時間、休日など。これらは候補者を紹介するうえで欠かせない情報です。
しかし、それだけで自社が求める人材や、仕事の魅力が十分に伝わっているでしょうか。
例えば、「営業経験3年以上」という条件があったとします。企業が本当に求めているのは、新規顧客を開拓する力なのか。既存顧客との関係を深める力なのか。それとも、複雑な課題を整理して提案する力なのか。同じ営業経験でも、期待する能力によって適した人材は異なります。
また、候補者にとって重要なのは応募条件だけではありません。
「なぜ、この会社は今、人材を採用するのか」
「入社後、どのような役割を期待されるのか」
「この仕事には、どのような面白さや難しさがあるのか」
「どのような人が活躍しているのか」
こうした情報が伝わっていなければ、人材紹介会社の担当者も、候補者に自社の魅力を十分に説明できない可能性があります。
人材紹介会社の担当者は、企業と候補者をつなぐ重要な存在です。その担当者が自社をどれだけ理解しているかによって、候補者への説明の具体性も変わります。
求人票を渡すことと、自社の採用課題や仕事の魅力を理解してもらうことは、別のことです。紹介会社を増やす前に、現在取引している担当者との情報共有を深める方が、有効な場合もあります。
4. 紹介された候補者への対応に、改善の余地はないか
人材紹介会社から候補者が紹介された後の対応も、採用成果に影響します。
例えば、書類選考の結果がなかなか出ない。
面接日程の調整に時間がかかる。
面接官によって評価基準が異なる。
不合格の理由が人材紹介会社に十分伝わっていない。
こうした状況が続くと、採用活動にどのような影響があるでしょうか。候補者は、自社だけの選考を受けているとは限りません。複数の企業を比較しながら転職活動を進めている場合もあります。選考に時間がかかれば、その間に他社の選考が進む可能性があります。
また、人材紹介会社にとっても、紹介した候補者がなぜ選考を通過しなかったのかが分からなければ、次の紹介に生かしにくくなります。例えば、企業から「経験が合わなかった」とだけ伝えられた場合と、「既存顧客への提案経験は豊富だったが、今回重視している新規顧客開拓の経験が不足していた」と伝えられた場合では、次に紹介すべき人材の理解が異なります。
もちろん、候補者の個人情報や評価情報の取り扱いには配慮が必要です。そのうえで、採用要件に関する認識を具体的に共有することは、紹介の精度を高めるうえで有効です。
人材紹介会社との関係は、求人を依頼して候補者を待つだけのものではありません。紹介された人材に対して、企業がどのように判断し、どのような対応をしているか。その積み重ねも、採用活動の成果を左右します。
5. 紹介会社の数より、協力関係の質を見直しているか
人材紹介会社を増やせば、それだけ候補者との接点が広がる可能性があります。一方で、取引先が増えるほど、企業側には各社との情報共有や進捗管理が必要になります。
すべての紹介会社に同じ情報を伝えられているでしょうか。採用条件が変更されたとき、その内容は各社に共有されているでしょうか。選考結果や不合格理由を、適切にフィードバックできているでしょうか。紹介会社ごとの実績や得意分野を把握できているでしょうか。
こうした管理が十分にできていないまま取引先を増やすと、企業側の負担が大きくなる可能性があります。
また、人材紹介会社によって得意分野は異なります。管理職や専門職に強い会社もあれば、特定業界に詳しい会社もあります。全国規模のネットワークを持つ会社もあれば、地域の採用市場に精通している会社もあります。
重要なのは、取引先の数そのものではありません。採用したい人材に対して、適切な紹介会社と、適切な協力関係を築けているかどうかです。
場合によっては、取引先を増やすことが有効です。反対に、既存の紹介会社との打ち合わせを増やし、採用要件や選考結果を丁寧に共有する方が、改善につながることもあります。どちらが適切かは、現在の採用活動の状況によって異なります。
6. そもそも、その採用は何のために行うのか
ここまで、人材紹介会社を活用する際の具体的なポイントを考えてきました。しかし、経営者にはもう一つ確認していただきたいことがあります。それは、今回の採用によって、事業や組織の何を実現したいのかということです。
例えば、営業部門の人員が不足している場合。必要なのは、営業担当者を一人増やすことでしょうか。それとも、新規顧客を開拓できる人材でしょうか。既存顧客への提案力を高める人材でしょうか。あるいは、営業組織のマネジメント体制を整えることが先なのでしょうか。
採用の目的によって、求める人材は変わります。そして、求める人材が変われば、適切な採用手段も変わります。人材紹介会社の活用が最適な場合もあれば、求人広告、社員紹介、直接採用など、別の手段を組み合わせる方が適切な場合もあります。
採用手段は、あくまで目的を実現するための選択肢です。「どの紹介会社を使うか」を考える前に、「何を実現するために、どのような人材が必要なのか」を明確にする。この順番が、採用活動の出発点になると考えています。
7. 人材紹介会社を増やす前に確認したい5つのこと
採用活動が思うように進まないときは、次の5点を確認してみてください。
① 採用できない原因は、候補者の紹介数にあるのか
紹介数だけでなく、書類選考、面接、内定、承諾までの状況を確認します。
② 採用要件は、市場の実態と合っているか
必須条件と歓迎条件を整理し、求める人材が現実的に採用可能か検討します。
③ 人材紹介会社は、自社の仕事や採用目的を十分理解しているか
求人票だけでは伝わらない仕事内容、期待する役割、仕事の魅力を共有します。
④ 選考の進め方やフィードバックに問題はないか
選考スピード、評価基準、候補者への対応、紹介会社との情報共有を見直します。
⑤ 取引先を増やすことが、本当に最も有効な対策か
既存の紹介会社との協力関係を深めることや、別の採用手段を検討することも選択肢に入れます。
この5つを整理した結果、紹介会社を増やす必要があると判断できれば、増やせばよいのです。
重要なのは、増やすこと自体を目的にしないことです。
おわりに|紹介会社を増やす前に、採用の構造を見直す
人材紹介会社は、企業が自社だけでは出会いにくい人材と接点を持つための、有効な採用手段の一つです。その価値を否定する必要はありません。
しかし、採用要件が市場と合っていない。仕事の魅力が十分に伝わっていない。選考の進め方に問題がある。こうした課題が残ったままであれば、紹介会社を増やしても、期待する成果につながらない可能性があります。
採用できない。だから紹介会社を増やす。その前に、一度考えてみてください。採用できない本当の理由は、どこにあるのでしょうか。
紹介会社の数を増やすことよりも、採用の目的、求める人材、選考の進め方を整理することが、成果への近道になる場合があります。採用活動で起きている事象と、その背景にある課題を分けて考える。その視点が、採用活動を改善する第一歩になると考えています。
内山優
