求人を出しても応募が来ない。
求人媒体が原因でしょうか?
求人広告を掲載しているのに、応募が来ない。採用活動を続けている経営者や採用担当者にとって、これほど悩ましい状況はありません。
求人広告には費用がかかります。採用できなければ欠員が埋まらず、既存社員の負担も増え、
事業計画にも影響します。そして応募が集まらないとき、多くの企業が最初に検討するのが、
求人媒体の変更です。
「今の媒体では応募が来ない」
「別の媒体なら、もっと人が集まるのではないか」
「掲載プランを上げれば改善するのではないか」
もちろん、求人媒体の選択は重要です。採用したい人材が利用していない媒体に求人掲載しても、応募は期待できません。しかし、ここで一つ考えていただきたいことがあります。
応募が来ないという事実と、求人媒体に問題があるという判断は、同じではありません。
採用活動で起きている「事象」と、その背景にある「課題」を分けて考えることが、改善の第一歩です。
1. 「応募が来ない」は課題ではなく、起きている事象
例えば、売上が落ちた企業があったとします。その際、経営者がいきなり「営業担当者を増やそう」と判断するでしょうか。商品力に問題があるのか。競合が価格を下げたのか。顧客のニーズが変化したのか。営業活動の進め方に問題があるのか。いくつかの可能性を検証して打ち手を決めます。
採用も同じです。「応募が来ない」というのは、売上が落ちたという事実と同じく、結果として表れている事象です。
その原因は、求人媒体以外であるケースが多く、たとえば、
- 仕事内容や働く魅力が求職者に伝わっていない
- 求職者が応募をためらう情報が掲載されている
- 競合求人と比較して見劣りした勤務条件になっている
- そもそも求人が閲覧されていない 等々
これらは、それぞれ必要な打ち手が異なります。
(個人的な見解ですが、実態は「働く魅力が求職者に伝わっていない」「そもそも求人閲覧されていない」の2つが多いです。働く魅力は、求人企業自体が把握されていないケースも多々見られます。)
ただ闇雲に打ち手を実施するのではなく、何が応募を妨げているのか、課題を明らかにすることが、採用活動では重要です。
2. 求人媒体を変える前に、応募までの過程を確認する
応募が来ない場合、まず実施することは、求職者が求人を見つけてから応募するまでの過程の確認です。
採用活動は、大きく分けると次のような流れで進みます。
どこで求職者が離れているかによって、改善すべきポイントは変わります。
求人そのものが見られていない場合
求人の表示回数が少ないのであれば、検索条件、職種の分類、求人タイトルなどを修正する必要があります。この場合、媒体の変更や掲載方法の見直しが有効なこともあります。
求人は見られているのに、応募されない場合
一方、求人の閲覧数は一定程度あるのに応募が少ない場合は、別の打ち手が必要です。仕事内容が分かりにくいのでしょうか。給与でしょうか。それとも、応募条件が厳しすぎるのでしょうか。この段階では、求人内容や採用条件の検証を行います。
なお、表示回数や閲覧数など、確認できるデータは求人媒体によって異なります。重要なのは、取得できる情報を使い、「どこに課題があるか」仮説を立てることです。応募数という最終結果だけを見ていては、改善の方向を誤る可能性があります。
3. その採用条件は、求職者からどう見えているか
企業が採用条件を決めるとき、出発点になるのは自社の事情です。
「これくらいの経験がある人が欲しい」
「できれば即戦力がいい」
「給与は既存社員とのバランスを考えたい」
「勤務時間や休日は、現在の体制を変えられない」
いずれも企業として理解できる考えで大事なことです。しかし、採用活動には大勢の競合がいます。求職者は、ひとつの企業の求人情報だけを見て応募先を決めるわけではありません。複数の求人を比較し、自分にとって魅力的だと感じる企業を選びます。
例えば、同じ職種、同じ地域で募集している競合企業と比較して、採用条件にどのような違いがあるでしょうか。企業側が「十分な条件だ」と考えていても、求職者にとってはそうではないかもしれません。反対に、給与水準だけでは競合に勝てなくても、仕事の裁量、働き方、教育体制、将来のキャリアなどに魅力がある場合もあります。
ここで大切なのは、単純に給与を上げることではありません。自社が求める人材に対して、どのような条件と魅力を提示できているのかを、採用市場の中で捉え直すことです。採用条件は社内だけで決めるものではなく、市場との関係を検証する必要があります。
4. 求人票は、企業が伝えたいことではなく、求職者が知りたいことを書く
求人票を確認すると、仕事内容が非常に簡潔に書かれていることがあります。
「営業業務全般」
「顧客対応および付随業務」
「当社の事業運営に関する各種業務」
企業側にとっては分かりきった仕事でも、求職者にとっては具体的なイメージが湧かない表現です。一方で、仕事内容を詳しく書けば、それだけで応募が増えるわけでもありません。大切なのは、求職者が応募を判断するために必要な情報を伝えることです。
例えば営業職であれば、次のような点です。
- どのような顧客を担当するのか
- 新規営業と既存顧客対応の割合はどうなっているのか
- どのような商品・サービスを扱うのか
- 目標や評価はどのように決まるのか
- 入社後、どのように仕事を覚えていくのか
これらが分かれば、求職者は入社後の働き方を具体的に想像できます。また、企業の魅力を伝える際も、抽象的な表現には注意が必要です。
「アットホームな職場です」
「やりがいのある仕事です」
「成長できる環境です」
こうした言葉は、それだけでは企業固有の魅力を伝えきれません。どのような場面でやりがいを感じるのか。どのような経験を通じて成長できるのか。抽象的な魅力を、求職者が理解できる具体的な情報に変えること。
求人票の改善とは、単に文章をきれいにすることではありません。自社の仕事と魅力を整理し、採用したい人材に届く言葉に置き換える作業なのです。
5. 応募数を増やすことだけが、採用成功につながるとは限らない
ここまで応募を増やすための考え方をお伝えしてきました。しかし、もう一つ忘れてはいけないことがあります。
応募数の増加そのものが、採用活動の最終目的ではない
応募が10件から30件に増えたとしても、採用したい人材が含まれていなければ、選考の負担だけが増えることになります。逆に、応募数は少なくても、自社に合った人材を採用できれば、採用活動として成果が出たと考えられるケースもあります。
採用活動で本当に実現したいことは何でしょうか。欠員を補充することなのか。新規事業を担う人材を迎えることなのか。将来の幹部候補を育てることなのか。
目的によって、必要な人材も採用方法も変わります。応募数、面接数、内定数、入社数といった数字は、採用活動を改善するための重要な指標です。しかし、その数字を増やすこと自体が目的になってしまうと、採用の本質を見失うおそれがあります。
採用活動は、事業や組織が目指す姿を実現するための手段です。だからこそ、求人媒体の選択から求人票の一文に至るまで、事業計画や組織の課題とつなげて考える必要があります。
求人媒体を変える前に、確認したい3つのこと
応募が来ないときは、次の3点を確認してみてください。
① 求人は、採用したい人材に十分見られているか
表示回数や閲覧数など、確認できるデータから求人の接触状況を把握します。
② 求人を見た人が、応募をためらう理由はないか
仕事内容、給与、勤務条件、応募資格、選考方法などを求職者の視点で見直します。
③ 採用条件は、競合求人や採用市場の実態と合っているか
自社の希望だけでなく、同じ人材を採用しようとしている企業との比較が必要です。
この3点を整理した結果、求人媒体の変更が必要だと判断できれば、変更すればよいのです。
大切なのは、媒体を変えることでも、変えないことでもありません。
課題を見極めたうえで、適切な打ち手を選ぶことです。
おわりに|採用活動は、求人媒体を選ぶ前から始まっている
求人を出しても応募が来ない。その状況を改善しようとするとき、求人媒体の変更や掲載費用の増額は、分かりやすい選択肢です。もちろん、それが有効な場合もあります。
しかし、応募が集まらない原因が採用条件や求人内容、あるいは採用したい人物像そのものにあるのであれば、媒体を変更するだけでは十分な改善につながりません。必要なのは、目の前で起きている事象と、その背景にある課題を分けて考えることです。
「応募が来ない。だから媒体を変える」ではなく、「なぜ応募が来ないのか。何を変えるべきなのか」を考える。
この違いが、採用活動の成果を左右します。
株式会社インテルノは、採用を求人媒体の選択だけで捉えるのではなく、経営戦略、組織の状況、人材要件、求人内容まで一貫して考える人事顧問、採用顧問の会社です。
採用活動が思うように進まないときこそ、対策を増やす前に、一度その原因を整理してみてはいかがでしょうか。
内山優
